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2021/02/24

押切もえさんが神保町で鳥取のジビエを堪能

「森の恵み」をいただく極上のイタリアン

フランス語で野生鳥獣の肉を意味するジビエ(仏gibier)-。ヨーロッパでは「食卓の花形」として王侯貴族に好まれてきた伝統的な食文化です。日本でも近年、農地などを荒らす厄介者だった野生のシカやイノシシなどを地域資源としてジビエに活用する取り組みが各地で行われており、中でも豊かな自然が広がる鳥取県のジビエは首都圏や関西の高級レストランで重宝されています。鳥取市出身のイタリアンシェフ徳吉洋二氏がオーナーを務める東京・神保町の「Alter Ego(アルテレーゴ)」を訪れたモデル・タレントの押切もえさんにジビエへの思いを語っていただきました。

押切さんには、低温で火を通した上に炭火で香りをつけた鳥取産シカ肉を賞味していただきました。アルテレーゴのシェフ平山秀仁さんが「ジビエの味わいを伝えたい」と丹精を込めた一品です。

鳥取の野山を感じる繊細な味

押切 いただきます…。やわらかくて、すごくおいしい。ジビエのイメージ変わりますね。

平山 ジビエと聞くだけで敬遠される方もいますが、捕獲するハンターが行う下処理のやり方次第で肉はすごくおいしくなります。食べていただいた料理は鳥取県内で捕獲、処理されたホンシュウジカですが、北海道のエゾシカと比べると繊細な味です。

押切 繊細って分かりますね。細かいうまみというか。捕獲するハンターの技術や経験が重要なんですか?

平山 そうですね。ハンターによるところが8、9割くらいでしょうか。止め刺しをしてから処理するまでの時間をなるべく短くして血抜きなどをすることで、ジビエ独特のいやな香りを抑えることができます。

押切 これまで食べたジビエの中には、本当に時々、ちょっと苦手だなって思う味もありましたけど、このお肉は全然違いますね。すごくおいしい。

平山 シカ肉は脂も少なくてヘルシーで、女性にはすごくいいと思います。

押切 スジっぽさも一切ないし。すっと口に入って、食べるのが止まりませんね。

平山 ソースにはフランボワーズ(キイチゴ)ビネガーを使っています。シカ肉にベリー系のソースはすごく合うんですよ。

押切 野山の感じがしますね。

平山 そうですね。鳥取の山々を想像していただければと思います。肉の付け合わせにはすり下ろしたユリネを使いました。砂糖を一切入れていませんが、すごく甘いと思います。

押切 あえてマッシュポテトにしないのは何か理由があるんですか?

平山 シカが捕獲された鳥取の山々をイメージしたとき、ジャガイモよりも土の香りがするユリネのほうがふさわしいと思いました。さらに、僕らは「シカ節」って呼んでるんですけど、かつお節を作るようにいぶしたシカのロースと黒トリュフをまぶしています。

押切 これがそうですか?すごくおいしい!

押切もえさんが語るジビエの魅力「自然の豊かさが詰まったおいしさ」

―お味はいかがでしたか。
鳥取のシカのお肉ということですけど、すごく柔らかくて、香りも良く、すっと入ってくるようなくちどけの良さでした。でも、ちゃんとお肉らしい味わいもあって、どんどん食が進んでしまう感じでした。

―初めてジビエと出会った思い出は。
今から15年ほど前、テレビ番組のロケでフランスのバルビゾン村という所に行ったとき、レストランで現地の方に「ハンターが捕まえたばかりのシカ肉を召し上がれ」と、出していただいたんです。その時もベリー系のソースでいただいたんですけど、それがジビエを初めて食べた経験ですね。においは大丈夫かな、硬いんじゃないかなってイメージが最初はあったんですけど、そんな先入観が覆されるくらい繊細な味で、すごくおいしかったです。

―その後もジビエに注目を。
まわりに食べることが好きな友人が多くいたので、食を楽しむ集まりがあると私も時々参加させてもらっていました。特に冬はジビエがおいしくなる季節だからということで、みんなでレストランに行く機会もありました。ワインエキスパートの資格を持っているんですけど、ジビエとワインを組み合わせることも面白かったです。このお肉が「こんな味なんだ」とか、「こんなお料理に変身するんだ」とか、毎回のように驚きがありました。

―ジビエの魅力は何だと思いますか。
自然の豊かさが詰まったおいしさ、だと感じます。いただいた平山シェフのお料理は、山で暮らしていたシカのお肉だということが想像できますし、ユリネの付け合わせとか、ベリー系のソースとか組み合わせも全部素晴らしくて。豊かな自然に感謝できる一品としていただけるのが魅力だと思いますね。

―ジビエは「命をいただく」ことだと。
本当にそうですよね。2019年11月に都内で開かれた「今こそ知ろう!国産ジビエシンポジウム」にゲストとして参加して、野生の鳥獣を狩猟する方、調理をする方、ジビエを広めようとしている方、鳥獣被害で困っている方などいろいろな立場の皆さんのお話を聞きました。「おいしいからいただく」というだけではなく、ジビエを取り巻くさまざまな背景を踏まえながら「命をありがたくいただく」ということをより感じさせられるお料理だと思います。

―ご自宅でもジビエを料理することはありますか。
以前、シカ肉をいただいて、オイスターソース炒めみたいなものを作りましたね。おいしかったですよ。手に入る機会が限られていますけど、おいしいジビエがもっと一般家庭にも広まるように流通すればいいなと思います。ただ平山シェフのようにおいしく作れないかもしれませんけど(笑)。

―食材としてどのように評価しますか。
ジビエは栄養価が高く、低脂肪で高たんぱく質な食材ですね。特にシカ肉は鉄分も多く含まれていると聞いています。健康にも美容にもいいということで、さらにありがたみが増しました。体を鍛えている方、ダイエットされている方にはすごくいいんじゃないかなって思います。今日いただいたシカのお肉は特にそうですけど、脂が少なく、スジもないですし、繊細なお肉でした。ジビエのいろいろな料理を食べてみたいって思いましたね。例えば、このお肉でハンバーグを作ったらどうなるんだろうとか。そんなことを考えてしてしまうくらいおいしく、この一品ですごく想像力をかき立てられます。「ジビエが苦手」とか、「おいしいのかな」って先入観を持っている方に食べていただいたらイメージが大きく変わるんじゃないかなって思います。

―「アルテレーゴ」の印象はいかがでしたか。
神保町には出版社があるので雑誌のお仕事でよく来ていましたが、路地裏にこんなかわいいお店があるんだって知り、外観を見て本当にワクワクしました。中もすごくおしゃれで、カウンターも広く、座って待っている間に平山シェフのお料理をする姿が見えて、次は何が出てくるんだろうってドキドキ感がありました。何よりもお料理がおいしかったです。本当にまたすぐ来たいですね。

「ALTER EGO」さんをはじめ、首都圏のフレンチやイタリアン15店舗が参加し、
鳥取県産のジビエを使った料理を提供する「とっとりジビエレストランフェア」が
3月7〜21日に開催されます。参加店舗など詳しくはこちら